2010年6月22日火曜日

重症ぜんそくに対する注射薬(ゾレア)















ぜんそくの患者さんは人口の3%にのぼるといわれています.
近年のぜんそく治療薬、とくに吸入ステロイド療法の確立によって、ぜんそくはきわめて良好にコントロールできるようになってきました.

しかしまれにどのような治療薬を組み合わせても症状がなかなか改善しない最重症のぜんそく患者さんがいます.
そういった方を対象に2009年ゾレア皮下注が認可されました.

ゾレアは通常、1回の皮下注射を2週間または4週間ごとにおこなう薬です.
ゾレアの注射液は粘性があり、皮下注射に多少痛みを伴う場合があります。また注射は5~10秒ほどかけて、比較的ゆっくり投与されます.
問題は薬価で、通常のぜんそく治療の何倍も必要になりますため、本当に重症なぜんそく患者さんに使用は限定されています.

それでも10年前と比べるとぜんそくの治療薬はラインナップも増え、うまくコントロールできる患者さんが多くなりました.
ぜんそく症状のある方はいちど相談ください.

2010年6月16日水曜日

ふくらはぎのむくみ(深部静脈血栓症?)


ふくらはぎが痛くてむくみんだりしていませんか?

静脈性浮腫は、静脈潅流(心臓への血のもどり)の障害によっておこるため、ほとんどが重力の低い下肢に出現します.下肢から心臓への潅流は、静脈弁による逆流防止(左図)と、下腿の筋肉ポンプ作用(=静脈のまわりの筋肉がしまることによって血管がしぼられること)によって維持されています.この両方の作用が低下している方(比較的高齢者に多いのですが)は、静脈性浮腫の頻度が高くなります.

このような静脈性浮腫の原因として、深部静脈血栓症があります.この病気では、比較的急に出現する痛みを伴い、腓腹筋(ひふくきん)の把握痛が出現するのが特徴です.ほとんどが片側下腿(とくに左)に発症し、しばしば鬱血による発赤や表在静脈(皮膚のすぐ下の静脈)怒脹がみられます.

診断には、ドップラーエコーが必要です.持続的な下肢の静脈圧の上昇によって、静脈瘤(こぶ)を形成し、色素沈着、湿疹、潰瘍などの変化が現れることがあります.

長期のねたきり、脱水、悪性腫瘍(がんなど)、外傷などがあり、高齢者に多い疾患とされています.
痛みをともなうふくらはぎのむくみがある場合には、相談してください.

2010年6月14日月曜日

ムカデ咬傷

ムカデに刺された患者さんが受診しました.
梅畑で仕事中に咬まれた翌日から痒みと腫れが出現しました.
というわけでムカデ咬傷のまとめです.

ムカデ毒:
ムカデ毒は、ヒスタミンやセロトニン等の酵素類が主成分であり、蜂毒とムカデ毒の両者には共通する成分が多いとされています. 受傷直後に激痛、そのあと(数日後)遅延性の局所熱感、広範囲な浮腫性紅斑がおこり、ときにリンパ管炎様の症状を生じます.
臨床的に問題となるのは咬傷直後に全身性蕁麻疹やアナフィラキシーショックをきたす即時型アレルギー反応であり、ハチ毒との交叉アレルギーがあった例も報告されています.このようなムカデ毒による即時型アレルギーは基本的にはきわめて稀ですが、ときに起こり得ます.

対処法:
・痛くて腫れている場合はまず冷やして下さい.
治療は、ステロイド外用剤を塗布+冷湿布を行なう。ムカデ咬傷で
 リンパ管炎様の症状がある場合は抗生剤の投与を行ないます.
抗ヒスタミン作用のあるステロイド外用剤
      (強力レスタミンコーチゾンなど)を用います.
・重症例や全身の蕁麻疹などではステロイド剤の全身投与も必要です.
・キンカンなどのアンモニア製剤も有効とされていますが、効果は確立
 していません.

ムカデの種類:
・一般的にはトビズムカデ(黒ムカデ).










温かくなる6月ごろから畑にあらわれます.

参考:

2010年6月11日金曜日

慢性咳の原因に百日咳(ひゃくにちぜき)

成人の長く続く咳の原因に百日咳が最近注目されています.

百日咳は主に乳幼児で流行する感染症でしたが、1981年にジフテリア・百日咳・破傷風三種混合(DPT)ワクチンが定期予防接種に導入され患者数は減ってきていました.しかしワクチン接種後の自然罹患による追加の免疫を得られない世代が増えてきたことによって、この数年成人の百日咳報告数が急増しています.

成人例やワクチンをすでに接種したこどもの百日咳では、痙攣のような乾いた咳とや息を吸うときの喘鳴などといった典型的な症状が出現しないことや、軽症例が多いため、発症しても気付きにくいことなどが問題で、発見がされにくいとされています.

百日咳を疑っても診断は採血による抗体検査が主で、確定診断をつけにくいという問題点もありますが、抗生剤や鎮咳剤の内服で症状をおさえていくことは可能です.

慢性的な咳が続く場合は受診をお勧めします.
できればマスク着用で来院されることが望ましいです.





2010年6月8日火曜日

おたふくかぜワクチンについて












◎成人でもおたふくかぜは発症します
おたふくかぜウィルス(ムンプスウィルス)は感染するとおよそ10~21日後に耳下腺や顎下線が腫れる疾患で、片側のみのこともあれば、両側のこともあります.不顕性感染といい、30~40%の人は無症状で経過します。いずれにしても免疫は獲得されてしまいます.合併症として、無菌性髄膜炎が最も頻度が高く、軽い症状まで含めると約10%で認められます。成人発症すると、子供より症状が重くなることが多く、特に男性は睾丸炎などが心配されます(成人男性であれば10~30%の頻度で起こります。ただし片側だけのことが大部分なので不妊症となることは稀であると言われています).永続性の高頻度難聴も合併症としてあげられますが、発症頻度は低いとされています.他にも膵炎などの合併症があります.

◎未罹患で合併症を気になさるようであれば、接種をお勧めます
おたふくかぜに免疫があるかどうかは血液検査をすれば判明しますが、時間と費用を要します。たとえば、おたふくかぜに免疫がある人が、おたふくかぜの予防接種を受けても、副反応はほとんど生じません.また、おたふくかぜの予防接種自体で、重大な副作用が生じるリスクは少ないとされています.予防接種を受けてもおたふくかぜウィルスに感染した際に発症してしまう方はいますが、予防接種を受けなかった人より症状が軽く、合併症が発症しにくい傾向にあります.いままでおたふくかぜにかかったことがなくて、合併症を気になさるようであれば、接種をお勧めします.ただ、任意接種ですので多少のお金がかかりますから、その点をふまえてご家族で相談してみてはどうでしょうか?

◎おたふくかぜワクチン
・いちどの接種で90%以上の免疫獲得が可能です.
・接種してから効果がでるまで1カ月かかりますので、はやめに接種が必要です.
・任意接種(保険適応外)で4,500円です.
生ワクチンですので、次のワクチン接種までに4週間あける必要があります.
・取り寄せになりますので、事前予約が必要です(25-0025).